Intel 12世代 Alder Lake に安価モデル登場!
1月5日、Intelは12世代CPU Alder Lakeシリーズに安価モデルを発表と同時に発売しました。オーバークロック非対応で型番にKがつかないモデルです。
Intel 12世代Core i5-12500,i5-12400(F),i3-12300,i3-12100(F) スペック比較表
Intel12世代 Alder Lake シリーズのスペック情報を以下の表にまとめました。
CPU型番 | Core i5 12500 |
Core i5 12400 |
Core i5 12400F |
Core i3 12300 |
Core i3 12100 |
Core i3 12100F |
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コア / スレッド数
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P-core | 6 / 12 | 6 / 12 | 4 / 8 | 4 / 8 | |||
E-core | 0 | 0 | 0 | 0 | ||||
合計コア数 / スレッド数 | 6 / 12 | 6 / 12 | 4 / 8 | 4 / 8 | ||||
ベースクロック
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P-core | 3.0GHz | 2.5GHz | 3.5GHz | 3.3GHz | |||
E-core | – | – | – | – | ||||
ターボクロック
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P-core | 4.6GHz | 4.4GHz | 4.4GHz | 4.3GHz | |||
E-core | – | – | – | – | ||||
TurboBoost Max3.0 | – | – | – | – | ||||
キャッシュ
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L2 | 7.5MB | 7.5MB | 5MB | 5MB | |||
L3 | 18MB | 18MB | 12MB | 12MB | ||||
メモリ保障帯域 | DDR5-4800(マザボがDDR5対応の場合) / DDR4-3200(マザボがDDR4対応の場合) | |||||||
内蔵GPU | Intel UHD Graphics 770 |
Intel UHD Graphics 730 |
– | Intel UHD Graphics 730 |
Intel UHD Graphics 730 |
– | ||
消費電力
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通常 | 65W | 65W | 60W | 60W | 58W | ||
ターボ時最大 | 117W | 117W | 89W | 89W | 89W | |||
ソケット | LGA1700 |
今回発売された安価モデルの特徴として、12世代Alder Lakeの売りともいえるE-coreが省かれていてP-Coreのみで構成されています。コア数は減っていますが、その代わりにベースクロックが高くなっています。TurboBoost Max3.0は搭載されていません。
Intel Core i5-12500は、6コア12スレッド設計。18MBのL3キャッシュを搭載し、クロックはベース3.00GHz、ブースト4.6GHz。内蔵GPUはIntel UHD Graphics 770です。
Intel Core i5-12400は、12500とコア数やスレッド数は同じですが、クロックはベース2.50GHz、ブースト4.4GHzとなっています。内蔵GPUはIntel UHD Graphics 730に変更されています。
Core i3のラインナップは、Intel Core i3-12300とi3-12100があります。両CPUとも4コア8スレッド(P-Core4個)を搭載しています。
またIntelは消費電力が高いイメージがありますが今回のシリーズは通常で65W、ターボ時でも117Wとかなり抑えめになっていることがわかります。Core i3は11世代シリーズでは発売されていなかったので久しぶりの登場となります。ライバルであるAMDの5000シリーズはミドルクラス以上のモデルしか投入されていません。そのがら空きとなった低価格帯にIntelは性能を向上させたCore i5,Core i3を投入してAMDのシェアを奪おうという戦略が見えます。
IntelはK無しモデルにはいつもCPUクーラーが付属されていますが、今回からCPUクーラーも新しくなリます。Laminar Coolerという名前で、3種類が用意されています。Laminar RH1クーラーはCore i9に、Laminar RM1クーラーはCore i7,i5,i3に、Laminar RS1クーラーはPentiumやCeleronにそれぞれバンドルされます。今までのIntelの付属クーラーは無骨で必要最低限の見た目をしていましたが、i9に付属するLaminar RH1クーラーはLEDが内蔵されており青く光ります。またファンの回りにアクリルパーツが取り付けられているのでLEDの光が全体を発光させるように設計されています。 RM1やRS1はLEDが内蔵されておらず光りませんが、昔のCPUクーラに比べればだいぶスタイリッシュになっている印象です。ちなみにノイズレベルは、RH1は2.6 BA、RM1は3.9 BAとなっています。RS1にはノイズレベルの記載が無いことからかなりうるさいと予想されます。
Intel 12世代Core i5-12400(F),i3-12300,i3-12100(F) ベンチマーク比較
まず最初に、海外で検証されたベンチマーク結果を見ていきましょう。
Cinebench R20 シングルコア性能
型番 | ベンチマーク |
Intel Core i9-12900K |
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Intel Core i3-12300 |
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AMD Ryzen 9 5950X |
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Intel Core i3-12100 |
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Intel Core i9-11900K |
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AMD Ryzen 9 5900X |
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AMD Ryzen 7 5800X |
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AMD Ryzen 5 5600X |
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Intel Core i5-12400 |
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Intel Core i9-10900K |
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AMD Ryzen 9 3950X |
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AMD Ryzen 9 3900X |
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12世代Core i3のシングルコア性能の高さには驚かされます。Core i3-12100は12世代シリーズで一番性能が低く安い製品ですが、Intelの前世代ハイエンドCPUであるCore i9-11900Kの性能を上回り、AMDの現役ハイエンドRyzen 9 5950Xとほぼ変わらないスコアを出しています。この性能が20000円を切る価格で購入できることも驚きです。
Intel Core i3-12300に至ってはRyzen 9 5950Xのシングルスコアを超えています。最初のスペック表にかかれているように1コアあたりのベースクロックの差がそのままシングルコア性能のスコアに表れていることがわかります。
Core i5-12400のスコアは12100や12300ほどインパクトが無いように感じますが、かつてゲーム性能で最高峰だったCore i9-10900Kのスコアを上回っているので十分なスコアといえるでしょう。
Cinebench R20 マルチコア性能
型番 | ベンチマーク |
Intel Core i9-12900K |
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AMD Ryzen 9 5950X |
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AMD Ryzen 9 3950X |
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AMD Ryzen 9 5900X |
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AMD Ryzen 9 3900X |
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Intel Core i9-10900K |
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Intel Core i9-11900K |
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AMD Ryzen 7 5800X |
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Intel Core i5-12400 |
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AMD Ryzen 5 5600X |
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Intel Core i3-12300 |
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Intel Core i3-12100 |
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Core i5-12400はRyzen 5 5600Xよりも高いスコアを出しています。マルチコアに強いと言われてきたRyzenよりも良いスコアをだしているのはとても好印象です。12400も5600Xも同じ6コア、12スレッドのCPUですが、12400の方がおよそ10000円ほど安く手に入れることが出来ます。
Core i3-12300もCore i3-12100も予想通りマルチコア性能のスコアは低いですが、価格帯を考えれば十分な性能と言えるでしょう。しかし、PCを使用する主な目的が動画編集などのクリエイター系の場合は他のCPUにした方が良いです。
Intel 12世代Core i5-12400(F),i3-12300,i3-12100(F) ゲーミング性能比較
次にゲーミング性能を比較します。様々なゲームを起動したときのFPSの数値をグラフ化しました。GPUはRadeon RX 6800 XTを使用しています。ゲームの解像度は1080Pです。
型番 | 平均FPS |
Intel Core i5-12600K |
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AMD Ryzen 5 5600X(PBO) |
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Intel Core i5-12400 |
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AMD Ryzen 5 5600G |
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Intel Core i3-12300 |
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Intel Core i3-12100 |
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Intel Core i5-11400 |
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AMD Ryzen 3 PRO 5350G |
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AMD Ryzen 3 3100 |
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AMD Ryzen 3 PRO 4350G |
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Ryzen 5 5600Xのカッコ内のPBOとは、Precision Boost Overdriveという自動オーバークロック機能を使用し、クロックを上げている事を指しています。その5600XとCore i5-12400の性能差は拮抗しています。平均FPSは20ほど12400の方が低いですが、各ゲームで見るとおよそ半分のゲームで12400の方が5600XよりもFPSが上回ったからです。5600Xの方が値段が高く、PBOも使用している事を考慮すると12400の優位性が際立ちます。
Core i3-12300、12100も共にAMDの同価格帯のCPUより高いスコアを出しています。前世代ミドルレンジでゲーム性能が高評価だったi5-11400よりも高いので、安くても十分楽しめるゲーミングパソコンを組みたい人におすすめです。
Intel 12世代Core i5-12400(F),i3-12300,i3-12100(F)消費電力比較
次に消費電力をグラフにしました。
型番 | 消費電力(W) |
AMD Ryzen 3 PRO 4350G |
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AMD Ryzen 3 PRO 5350G |
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Intel Core i3-12100 |
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AMD Ryzen 3 3100 |
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Intel Core i3-12300 |
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Intel Core i5-12400 H0 |
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AMD Ryzen 5 5600G |
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Intel Core i5-12400 C0 |
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Intel Core i5-11400 |
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AMD Ryzen 5 5600X(PBO) |
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Intel Core i5-12600K |
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Core i5-12400の横に書かれているH0、C0という文字はCPUのリビジョンを表しています。12400にはE-coreがついていませんが、E-coreが組み込まれているもののその機能が無効化されているC0、製造時からE-coreが組み込まれていないH0が存在します。2つのCPU性能と仕様に違いはありませんが、発熱と消費電力に差が生じます。
上のグラフで見るとC0の方が若干消費電力が高いことがわかります。しかし全体的に見て大きな差は無いと言えるでしょう。H0に拘る必要はありません。
Intel Core i5-12400 H0の最大負荷時の消費電力は73Wですが、PBOを搭載したAMD Ryzen 5 5600Xは119Wの電力を消費しています。先程のゲーミング性能のスコアと比べてみても12400は5600Xと拮抗した性能ですが、5600Xよりも40W近く消費電力が抑えられているでとても効率の良いCPUだということがわかります。
Intel Core i3チップは、AMD Ryzen 3 5350Gの52.6Wに対して61~64Wと若干消費電力が多くなっています。しかしゲーミング性能では平均30~40%の性能向上が見られるので性能と消費電力のバランスは取れていると言えます。
Intel 12世代Core i5-12400(F),i3-12300,i3-12100(F) CPU温度の比較
次にCPU温度をグラフにしました。
型番 | CPU温度(℃) |
Intel Core i5-12400 H0 |
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Intel Core i5-12400 C0 |
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Intel Core i3-12100 |
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Intel Core i3-12300 |
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Intel Core i5-11400 |
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AMD Ryzen 3 PRO 4350G |
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AMD Ryzen 3 PRO 5350G |
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AMD Ryzen 3 3100 |
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AMD Ryzen 5 5600G |
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Intel Core i5-12600K |
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AMD Ryzen 5 5600X(PBO) |
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12世代Core i5,Core i3がCPU温度でも上位を独占しています。
AMD Ryzen 5 5600Xの86℃に対して、Intel Core i5-12400は58℃とかなり低くなっています。
Core i3は、Core i5よりベースクロックが高い分、わずかに温度が高く、最大62℃で動作しますが、Ryzen 3 5350Gの68℃よりもはるかに低くなっています。ゲームを快適に遊ぶために高価な簡易水冷クーラーを買う必要が無いのはとてもメリットと言えるでしょう。
まとめ
今回12世代CPUは過去の14nmプロセスから改良型10nmプロセスである「Intel 7」を採用し、素晴らしくアップグレードしたCPUを発売しました。特に今回のCore i5とCore i3は破格の性能です。シングルコア性能においてAMD Ryzen 9 5950Xと同等か、それを上回るスコアを出しています。
ゲームのようなシングルコア性能が重視されるソフトウェアで真価を発揮することができるでしょう。一方でマルチコア性能は弱く、動画編集、画像編集、イラスト系のようなマルチコアを多用するソフトウェアは苦手なCPUとなっています。
AMDに低価格のCPUがラインナップされていない現在、エントリークラスやミドルクラスでPCを自作したい人の選択肢はIntel一択となっています。今回のCPUはAMDの独走状態だった状況を一変させる可能性を持っていると言えるでしょう。