参考
https://www.techpowerup.com/review/amd-ryzen-7-5700g/
https://www.techspot.com/review/2293-amd-ryzen-5700g/
Ryzen 5 5700G 5600G 性能比較表
今回は、グラフィック機能を内蔵したAPU Ryzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gの性能をレビューしていきます。AMDがグラフィック機能を内蔵したAPUを発表するのは約2年ぶりとなります。
もともとこの製品は4月にリリースされていましたが、OEM向けということで自作用としては手に入れることができませんでした。
しかしAMDはRyzen 7 5700GとRyzen 5 5600GをBOX版として一般向けに販売することを発表し、8月6日に発売されました。
グラフィック内蔵なので、ビデオカードを購入しなくても映像出力が行えるメリットありますが、グラフィック性能はどうなのか気になるところです。
最初にRyzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gのスペックを確認しましょう。参考に他のCPUも載せてあります。
型番 | 価格 | コア/スレ | クロック | ターボ | L3 Cache |
TDP | 構造 | プロセス | ソケット | GPU | GPUクロック |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 7 5800X | ¥61,800 | 8 / 16 | 3.8 GHz | 4.7 GHz | 32 (1×32) | 105W | Zen 3 | 7 nm | AM4 | 無し | 無し |
Core i7-11700K | ¥48,890 | 8 / 16 | 3.6 GHz | 5.0 GHz | 16 | 125W | Rocket Lake | 14 nm | LGA 1200 | UHD Graphics 750 Xe 32EU | 1300 MHz |
Ryzen 7 5700G | ¥51,800 | 8 / 16 | 3.8 GHz | 4.6 GHz | 16 | 65W | Zen 3 | 7 nm | AM4 | RX Vega 8 | 2000 MHz |
Ryzen 7 4750G | ¥46,980 | 8 / 16 | 3.6 GHz | 4.4 GHz | 8 | 65W | Zen 2 | 7 nm | AM4 | RX Vega 8 | 2100 MHz |
Ryzen 5 5600X | ¥41,800 | 6 / 12 | 3.7 GHz | 4.6 GHz | 32 (1×32) | 65W | Zen 3 | 7 nm | AM | 無し | 無し |
Core i5-11600K | ¥34,970 | 6 / 12 | 3.9 GHz | 4.9 GHz | 12 | 125W | Rocket Lake | 14 nm | LGA 1200 | UHD Graphics 750 Xe 32EU | 1300 MHz |
Ryzen 5 5600G | ¥36,800 | 6 / 12 | 3.9 GHz | 4.4 GHz | 16 | 65W | Zen 3 | 7 nm | AM4 | RX Vega 7 | 1900 MHz |
Ryzen 5 3600 | ¥27,480 | 6 / 12 | 3.6 GHz | 4.2 GHz | 32 | 65W | Zen 2 | 7 nm | AM4 | 無し | 無し |
Core i5-11400 | ¥24,980 | 6 / 12 | 2.6 GHz | 4.2 GHz | 12 | 65W | Rocket Lake | 14 nm | LGA1200 | UHD Graphics 750 Xe 24EU | 1300 MHz |
Ryzen 5 3400G | ¥29,745 | 4 / 8 | 3.7 GHz | 4.2 GHz | 4 | 65W | Zen+ | 12nm | AM4 | RX Vega 11 | 1400 MHz |
Ryzen 7 5700Gは、AMDのZen 3アーキテクチャを使用した8コア、16スレッドのプロセッサで、ベースクロックは3.8 GHz、最高クロックは4.6 GHz、16MBのL3キャッシュを搭載し、TDPは65Wです。
これまでのXシリーズとは違い、グラフィック機能が内蔵されています。GPUは2.0GHzで動作するRadeon RX Vega CUとなっており、8個搭載されています。AMDの次世代GPUアーキテクチャ「RDNA 2」ではなく、従来通りのVegaなので特に目新しくは感じません。他のZen 3プロセッサーと同様に、Ryzen 5000GチップはDDR4-2933からDDR4-3200に変更されているのでゲームパフォーマンスの向上に期待できます。
しかし、8コアのRyzen 7 5800Xと比較すると、ピーク時のブーストクロックは100MHz、L3キャッシュは半分になっているのでCPU自体の性能は下がっているのが残念です。また、24レーンのPCIe 4.0サポートから20レーンのPCIe 3.0に変更されています。
Ryzen 5 5600Gは、6コア、12スレッドのプロセッサで、ベースクロックは3.9 GHz、最高クロックは4.4 GHz、16MBのL3キャッシュを搭載し、TDPは65Wです。5600Xとの違いは、クロックスピードです。5600Gはベースクロックを3700MHzから3900MHzに上げていますが、5600Xはターボ・ブーストを4.4GHzから4.6GHzに上げており、その差は+200MHzになります。L3キャッシュも半分になっています。こちらも5700Gと同様にPCIe Gen4がサポートされていないため、24レーンはすべて3.0となります。GPUは1.9 GHzで動作する7つのRadeon RX Vega CUを搭載しています。
Ryzen 7 5700Gの価格は51,800円ということで、5600Xと5800Xの中間に位置していますが、L3キャッシュが大幅に削減され、PCIe 4.0がサポートされずにPCIe 3.0規格に変更されたことを考えると、決してコストパフォーマンスが高いとは言えないかもしれません。
Ryzen 5 5600Gは36,800円ですが、5600Xよりも5,000円ほど安くなっているだけです。こちらもCPU性能として5600XよりL3キャッシュが減らされているのが気になります。しかもRyzen 5 5600Gよりも安く、Core i5-11600KやCore i5-11400を買えることを考えると大変悩ましいところではあります。
ではベンチマークの結果を見ていきましょう。
Ryzen 7 5700GとAMD Ryzen 5 5600Gの処理性能
まずはじめにCPUの性能だけをチェックします。GPUにRTX 2080 Tiを使用しRyzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gのテストを行い、他のCPUデータと比較します。
マルチコアのCGレンダリング性能 Cinebench R20 (RTX 2080 Ti)
型番 | ベンチマーク |
Intel Core i9-10900K |
|
AMD Ryzen 7 5800X |
|
Intel Core i9-11900K |
|
AMD Ryzen 7 5700G |
|
Intel Core i9-10700K |
|
AMD Ryzen 7 3700X |
|
AMD Ryzen 5 5600X |
|
AMD Ryzen 5 5600G |
|
Intel Core i5-11600K |
|
Intel Core i5-11400F |
|
AMD Ryzen 5 3600 |
|
Intel Core i5-10600K |
|
Intel Core i5-10400F |
|
AMD Ryzen 5 2600 |
|
AMD Ryzen 5 3400G |
|
シングルコアのCGレンダリング性能 Cinebench R20 (RTX 2080 Ti)
型番 | ベンチマーク |
AMD Ryzen 7 5800X |
|
Intel Core i9-11900K |
|
Intel Core i5-11600K |
|
AMD Ryzen 5 5600X |
|
AMD Ryzen 7 5700G |
|
AMD Ryzen 5 5600G |
|
Intel Core i9-10900K |
|
Intel Core i5-11400F |
|
Intel Core i9-10700K |
|
AMD Ryzen 7 3700X |
|
AMD Ryzen 5 3600 |
|
Intel Core i5-10600K |
|
Intel Core i5-10400F |
|
AMD Ryzen 5 3400G |
|
AMD Ryzen 5 2600 |
|
Cinebench R20を使用し、マルチコアとシングルコアのスコアを出してみました。
Cinebench R20のマルチコアでは、Ryzen 7 5700Gが5432ptと、5800Xや11900Kよりも遅く、約10%の差で引き離されているものの、なかなか良いスコアを出していることがわかります。
10700Kよりも約9%速いという結果が出ていますが、コア数が5800Xと同じでクロック数もほぼ同じであることから、L3キャッシュの不足がパフォーマンスを低下させていると考えられます。
シングルコア性能を見ると、5700Gは5600Xよりも遅いですが、シングルスレッド性能ではわずか3%の低下にとどまっており、AMDの過去の最高のデスクトップAPUである3400Gと比較すると、シングルコア性能が39%向上していることがわかります。
Ryzen 5 5600GはCore i5-11600Kと同等で、5600Xよりわずかに遅いことがわかります。その理由はよくわかりませんが、おそらく16MBのL3キャッシュが、8コアではなく6コアの処理に適しているのではないかと思います。
Ryzen 5 5600Gのシングルスレッド性能は5600Xと比較して7%ほど低くなっています。大きな差ではありませんが、マルチスレッドテストで見られたものよりも顕著で、5700G対5800Xの差に匹敵しています。
Adobe系ソフトウェア における性能(RTX 2080 Ti)
Puget Systemsから出ているAdobe Photoshop、Premiere Pro、After Effectsのベンチマークを行い、その平均値をグラフにしました。
型番 | ベンチマーク |
Intel Core i9-11900K |
|
AMD Ryzen 7 5800X |
|
Intel Core i9-10900K |
|
Intel Core i5-11600K |
|
AMD Ryzen 5 5600X |
|
AMD Ryzen 7 5700G |
|
AMD Ryzen 5 5600G |
|
Intel Core i5-11400F |
|
Intel Core i9-10700K |
|
AMD Ryzen 7 3700X |
|
Intel Core i5-10600K |
|
AMD Ryzen 5 3600 |
|
Intel Core i5-10400F |
|
AMD Ryzen 5 2600 |
|
AMD Ryzen 5 3400G |
|
Cinebench R20のシングルスレッドテストで見られるように、5700Gは6コアの5600Xよりも遅く、L3 Cacheの少なさがスコアに現れていると思います。5800Xよりも13%、5600Xよりも5%ほど遅くなっています。
6コアのRyzen 5 5600Gは8コアのRyzen 7 5700Gとほぼ同じスコアでした。これは、Adobeのソフトウェアがコアの数が多ければ処理速度が早くなるわけでは無く、1つか2つのコアの処理性能に大きく依存しているからと思われます。5600Xよりもスコアが低いのは5700Gと同じくL3 Cacheの減少が影響していると思われます。
Ryzen 7 5700GとAMD Ryzen 5 5600Gの消費電力(RTX 2080 Ti)
Blenderを使用しているときの消費電力を見てみましょう。スコアが少ないほうが消費電力に優れています。
型番 | ベンチマーク |
Intel Core i9-10700K |
|
Intel Core i9-11900K |
|
Intel Core i9-10900K |
|
Intel Core i5-11600K |
|
AMD Ryzen 7 5800X |
|
AMD Ryzen 7 5700G |
|
AMD Ryzen 7 3700X |
|
Intel Core i5-10600K |
|
Intel Core i5-11400F |
|
AMD Ryzen 5 5600G |
|
AMD Ryzen 5 2600 |
|
AMD Ryzen 5 5600X |
|
Intel Core i5-10400F |
|
AMD Ryzen 5 3600 |
|
AMD Ryzen 5 3400G |
|
Ryzen 7 5700Gは5800Xよりも消費電力が15%も削減されているのがわかります。同じコア数でグラフィック機能も内蔵していることを考慮すると、かなり電力効率がいいと言えるのではないでしょうか。
一方でRyzen 5 5600Gは、ベンチマークスコアで5600Xよりも下の数値を出しているにも関わらず、消費電力ではわずかに多くなっています。
しかしAMD対Intelで見ると、圧倒的にIntel系の消費電力が高く、AMDはこの点で優秀であることは一目瞭然です。IntelはRocket LakeでAMDの効率的なAPUに対抗するために電力を上げてパワーを重視しました。その結果がスコアに現れています。
Ryzen 7 5700GとAMD Ryzen 5 5600Gのゲーミング性能
Ryzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gのゲーミング性能を確認するために様々なゲームを起動したときのFPSの平均値をグラフで見てみたいと思います。
内蔵GPUと外部GPUの2パターンのデータを取りました。
内蔵GPUの平均FPS
内蔵GPUではRyzen 7 5700GのVega 8グラフィックスと、Ryzen 5 5600GのVega 7グラフィックス、3400Gおよび11700のiGPUを使用しています。比較のために、Radeon RX 550、GeForce GTX 1060のメモリが3GBバージョンと6GBバージョン、Radeon RX 5500 XTも加えていますが、これらはすべてRyzen 5 5600Xでテストしたものです。
ゲームの解像度は1080pで、ゲーム内でのセッティングは軽量のものが選ばれています。
型番 | ベンチマーク |
AMD Radeon RX 5500 XT 4GB |
|
Nvidia GeForce GTX 1060 6GB |
|
Nvidia GeForce GTX 1060 3GB |
|
AMD Ryzen 7 5700G + iGPU |
|
AMD Radeon RX 550 |
|
AMD Ryzen 5 5600G+ iGPU |
|
AMD Ryzen 5 3400G+ iGPU |
|
Intel Core i7-11700+ iGPU |
|
Ryzen 7 5700GがRX 550よりも高いFPSの平均値を出しています。内蔵グラフィックの性能が高くなってきていることを実感します。軽めのゲームであれば1080pであっても30FPSをキープできる性能がありますのでカジュアルにゲームを楽しむことはできそうです。しかし、最新のゲームを楽しむにはやはりスペック不足が否めないところでしょう。FPSが30を切ってしまうゲームがいくつかあり、最低限のプレイも出来ない状況もありました。720pに解像度を落とせばある程度プレイできるようですが、それだと最新の高画質のゲームをするには満足出来ないでしょう。
Ryzen 5 5600GはRX 550とほぼ同じFPSを出しています。3400Gより20%、Intel Core i7-11700と比較すると130%以上のFPSをキープしていることがわかります。しかしこちらも最新のゲームを快適に楽しむには圧倒的スペック不足です。3世代前の低価格グラフィックボードのNvidia GeForce GTX 1060 3GBと比べると、性能が半分以下というのは少し物足りない気がします。同じことが5700Gについても言えます。
外部GPUの平均FPS
外部GPUとして RTX 3090を使用したときの平均FPSのスコアを見てみましょう。RTX 3090は現時点で最新の最高性能グラフィックカードです。
ゲームの解像度は1080pで、ゲーム内でのセッティングは最高品質のものが選ばれています。
型番 | ベンチマーク |
AMD Ryzen 7 5800X |
|
AMD Ryzen 5 5600X |
|
Intel Core i9-10700K |
|
Intel Core i5-11600K |
|
Intel Core i5-11400F |
|
AMD Ryzen 7 5700G |
|
Intel Core i5-10600K |
|
Intel Core i5-10400F |
|
AMD Ryzen 5 5600G |
|
AMD Ryzen 7 3700X |
|
AMD Ryzen 5 3600 |
|
AMD Ryzen 5 2600 |
|
AMD Ryzen 5 3400G |
|
Ryzen 7 5700GがIntel Core i5-10600Kと同じスコアを出しているのでゲーミング性能が比較的高いことがわかります。しかし、5800Xどころか、5600Xよりも性能がおちています。5800Xと比べると10%ダウン、5600Xでは9%ダウンとなっています。これらのことを踏まえると、最初からグラフィックカードを購入する予定の場合、5700Gが筆頭候補に上がることは少ないかもしれません。しかし、このベンチマークの結果はRTX 3090 を1080pで使用したときの結果なので、1440p以上でゲームをする場合、RTX 3070のような平均的なパフォーマンスのGPUを使用すれば5800Xと5700Gの差は小さくなるでしょう。
Ryzen 5 5600GはCPU性能としては3700Xとほぼ同等の性能です。決して悪いとは言えませんが、RTX 3090 のような高性能のグラフィックカードを使用する場合、Core i5-10400Fのような安価なパーツでも、5600G以上の性能が発揮できるということです。また、CPU負荷時には、5600Gは5600Xよりも平均して14%遅く、これはかなり大きな差であると言えます。
Ryzen 7 5700GとAMD Ryzen 5 5600G まとめ
今回はRyzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gの性能について解説しました。
Ryzen 7 5700Gはほとんどのベンチマークにおいて高レベルのスコアを出していました。グラフィック機能が内蔵されていることは大きなメリットと言えます。パソコンの性能を過度に要求しないゲームであれば1080pの解像度でも遊ぶことが出来ます。オフィスワークや、ネットサーフィンをするような一般的な使い方をする人に撮っては十分すぎる性能と言えるでしょう。しかし、最新のゲームを最高画質で楽しみたい方にとっては明らかなスペック不足です。その場合は外付けのグラフィックボードを購入して取り付けたほうが遥かにゲームを楽しむことが出来ます。最初からグラフィックボードを購入するつもりの場合、このAPUを選ぶメリットが全くないことは「外部GPUの平均FPS」の項目を見ると明らかでは無いでしょうか。APUとGPUの組み合わせによっては5700Gよりも安価で高性能なパソコンを手に入れることができるからです。
Ryzen 5 5600Gは5700Gよりも15000円ほど安いにもかかわらず、性能がガクンと落ちることはありませんでした。安く、ミドルレンジの性能を持ち、内蔵グラフィックス付きのAPUを手に入れたい人にとって最適な選択肢の一つと言えるでしょう。軽いゲームも楽しめます。グラフィックボードの供給が安定するまでのつなぎとしても使用することができるでしょう。5700Gを買うよりも、5600Gを買ってその差額で最新のGPUを買うのがいい選択に思います。
- 自作PC予算別まとめ20選!見積もり,作り方,組み立てをプロが解説…https://artjuku.com/pc-make/
- おすすめ最新CPUと選び方…https://artjuku.com/cpu/
- CPU比較表…https://artjuku.com/cpu-compare/
- おすすめ最新GPUと選び方…https://artjuku.com/gpu/
- GPU比較表…https://artjuku.com/gpu-compare/
- マザーボードおすすめ,選び方…https://artjuku.com/board/
- SSDおすすめ,選び方…https://artjuku.com/ssd/
- モニタ,ディスプレイ選び方…https://artjuku.com/monitor/
- PCメモリおすすめ,選び方…https://artjuku.com/memory/
- CPUクーラーおすすめ,選び方…https://artjuku.com/cooler/
- PCケースおすすめ,選び方…https://artjuku.com/case/
- 電源ユニットおすすめ,選び方…https://artjuku.com/unit/











